コロナ対策のおかげで死亡者減?

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死亡数が11年ぶりに減ったという記事がありました。新型コロナウイルス対策の効果で、他の感染症が減少したために死亡数が減った、と受け取れる書き方がされています。

ところで、この統計ですが、元になる人口動態統計速報( https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/s2020/12.html )は月別に出ています。それを見ると・・・

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1月単月で8,670人、対前年で減少しており、1年全体での減少数(9,373人)に対して、非常に寄与が大きいことがわかります。

さて、2020年の1月と言えば、まだ新型コロナ騒ぎは日本ではさほど大きくなっておらず、行動変容はほとんどなかった時期であるといえると思います。ということは、新型コロナ対策のおかげで・・・という説明は本当に正しいのでしょうか?

死亡数の絶対数のグラフを見ると、冬の死亡が1年で最多です。冬はインフルエンザをはじめとする感染症が増えるだけでなく、心疾患や脳血管疾患も増える傾向があります。

それを踏まえて、2020年の1月は、記録的な暖冬でした。統計開始以来の記録が続出しました。

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となると、2020年1月の死亡者減は、暖冬のおかげと考えるのが妥当な説明だと思います。そして、2020年1月・2月の死亡者減を足すと、年間死亡者減を超えます(つまり、3~12月だけで見ると前年より死亡者が多いのです)。

もちろん、欧米などで見られるような新型コロナウイルスに伴う超過死亡が見られなかったという点は非常に素晴らしいことだと思います。だからといって、この統計だけを見て行動変容の効果を過大に評価するのは勇み足(*)であると思います。

 

*)逆に、この統計だけを見て、「死亡者減はほぼ100%暖冬のおかげだ。行動変容の寄与なんてない!」というのも言い過ぎです。コロナ流行が仮になくて行動変容もなかった世界線であれば、例年通り2万人程死者が増えるはずが暖冬で1万人減って、結果1万人増に落ち着いていた・・・かもしれません。多数のパラメータが関与する「混ざりもの」である統計数値から各パラメータの寄与を導き出すのは困難なのです。