コインハイブ事件 高木浩光氏証言の件

コインハイブ事件 高木浩光氏証言の件、ネットでは絶賛のようですが、個人的には「びみょー」だと思っています。

まず、

JavaScriptは、閲覧者側のPC内のファイルに触れられない機能になっており、バックグラウンドで動作する機能も設けられていないため、「どのようなサイトもクリックして問題ないように設計されている」と説明。

「取り返しのつかないほどの挙動はしない。データプライバシー上の問題は議論されているが、ただちに刑事罰としている国はない」と述べた。

引用元:コインハイブ事件 高木浩光氏が公判で証言「刑法犯で処罰されるものではない」 - 弁護士ドットコム

 

の点です。現在はそう言ってもいいかもしれませんが、2011年に不正指令電磁的記録に関する罪が刑法に追加された頃は、Gamblar(ガンブラー)のようなJavaScriptで感染するWeb感染型ウイルスが猛威を振るっていた頃ですし、なにより不正指令電磁的記録に関する罪の最初の適用例は「ブラクラ」でした。

 

www.itmedia.co.jp

裁判官はIT動向に詳しくないですから、「どのようなサイトもクリックして問題ないように設計されている」という証言は判例に反するものと感じる可能性が高いと思います。

 

また、最も悪手だと思ったのは、裁判官質問への対応です。

https://twitter.com/shonen_mochi/status/1085104857512431616

 

IIJもセキュリティ事業に力を入れている会社なので、トレンドマイクロと五十歩百歩で、Coinhiveの悪魔化には余念がありません。

 

Coinhiveは一見被害がないように見えるが、ユーザーのCPU処理能力を「盗む」という意味では一種のマルウェアと言える。

https://twitter.com/shonen_mochi/status/1085104857512431616

引用元:Wannacryは終わっていない? - IIJが語るセキュリティ動向 (1) マルウェアの活動が目立った2017年 | マイナビニュース

 

 裁判官がわざわざ「IIJのレポート」と明言するからには、該当するレポートを持っていて参考にするつもりなのでしょう。敵に塩を送った形になっているように見えます。ここは、

IIJもセキュリティで商売をしているため、グレーゾーンを黒と言う傾向があると考える。だが、疑わしくは被告人の利益という大原則のとおり、刑事罰の適用という観点からはグレーゾーンは白と見るべきと考える。」

のような証言をするべきだったと考えます。

 

(理系)弁護士の方も、

  1. 「不正」であるかは規範的、つまり裁判官の胸先三寸で決まる。
  2. セキュリティソフト会社が後ろについている可能性が高い

と言っています。

iwanagalaw.blog.shinobi.jp

 ということで、裁判官の心証形成が重要と思われるこの裁判で、今回の高木浩光氏証言は「びみょー」だなと思った次第であります*1

*1:とはいえ、個人的にはこの事件は無罪になるべきと思っております。また、そもそも検察の起訴も無理筋な面はあるように思うので、どちらに転ぶかはわかりませんね。